機械のカラダ
一年前に先行帰国し、この春から大学生の息子のこと。
アメリカにいる頃からプログラミングの世界に浸り、自作のゲームを作り、高校で知り合った仲間とプログラミングのコンテストに出、HP作成などのバイトをしたことも。
日本にいる今も、そんなようなことをやっている。
夜な夜なというか、日中はオンライン授業があるし、昼も夜もパソコンに向かって何やらカタカタやっている。
やりたいことがたくさんありすぎて、一日の時間が足りないのだそう。
自分は人間だから睡眠も栄養も取らないといけないし、不摂生すると体調を崩す。
ある日、彼は「早く機械の体になりたいな」とつぶやいた。
このセリフが、ずうっと私の中に残ってしまった。
なんてことない会話の中での一言だったし、その時は私も軽く「あははー」なんて通り過ぎたのに、彼がアパートに戻ってしまってずいぶん時間がたってから、このセリフが胸に引っかかってることに気が付いた。
彼は機械の体が欲しいのだ。
寝る間が惜しいほど打ち込めることがあるのは素晴らしいことだ。
そうまでしてやりたいことがあるのなら応援したい。
でも。
何とも言えないもやもやが、のどにつかえる。
私の子供が、人間じゃなく機械になりたいなんていう生活を送っていることに少なからずショックを受けた。
本人はそこまで深い意味で言ったのではないにしても。だ。
大学のために一人暮らしを始めて、でもオンライン授業だから外に出ることもなく、趣味の世界に没頭する日々。きちんと食べていないのだろう、あきらかに一年前より体重も随分落ちている。もっと筋肉があったはずなのに、Tシャツの下で肩がとがっている。
早く大学の対面授業が再開してほしい。
早くあの子に連れ立って遊べて、気の合う人間の友達ができてほしいと思う。
機械の体じゃなくてもいいって思えるような、そんな生活を送ってもらいたい。